時事問題士の一条直宏です。

あるテレビ番組で「こんなテーマの時事問題は出題されにくい」という特集がありました。


そのテーマとは、「日々情勢が大きく変わるテーマ」と「デリケートなテーマ」。

この2つのテーマは確かに出題されにくいテーマです。攻略法のご紹介の前に、それぞれのテーマが、「どうして出題されにくいか」を解説しましょう。

まず、「日々情勢が大きく変わるテーマ」については、出題者が作問してから、情勢が大きく変わり正答が誤答(逆も然り)になってしまうと、受験生の実力を知るための貴重な問題が1問無駄になってしまうためです。作問者も、試験開始時間まで、落ち着かないでいるのは嫌ですよね。ということで、情勢が変わりにくいテーマが好まれます。

 

次に「デリケートなテーマ」の時事問題についてはどうでしょうか。
デリケートなテーマとは、試験実施主体によって変わりますが、たとえば、地方自治体の試験で沖縄の基地問題を出題するのは、それなりにハードルが高いと考えます。なぜなら、他の自治体の課題を正面切って問題にすることは、かなりの配慮が必要だからです。

どちらのテーマも丸々1問として出題は難しいのですが、実は「日々情勢が大きく変わるテーマ」は、枝単位で出題可能性が高く、時事問題攻略につながる重要なテーマなのです。

枝単位で出題可能性が高いという理由は、「情勢が変わる可能性のあるもの」を「不変である」という内容の誤答枝にすることが容易だからです。

 

では、「作問者視点からの時事問題攻略法」をご紹介します。
①「〇〇がある」という枝を「〇〇がない」と直す。(最初から「〇〇がない」とする枝は、そのまま)
②「〇〇がない」ことが言えるかどうかを「試験直前までに変更可能性はあるか」という観点で検討する。

平成28年度行政書士試験の問525択問題)を取り上げて見ていきましょう。
枝1と2は、上記の攻略法では判断がつきませんが、下記の3枝は上記の攻略法で判断可能で、この問題は専門知識がなくとも正答が可能でした。
では、一つずつ見ていきましょう。

 

「ウ 同性婚は法律で認められていないが、結婚に相当する同性の関係について、定めを置く自治体の条例がある。」

まずは、「条例がある」を「条例がない」に直します。次に、「試験直前までに変更可能性はあるか」検討します。1,700超の自治体数から考えると、条例が出来る可能性も考えられるでしょう。ゆえに、「条例がない」という誤答枝としての成立は難しく、こちらは「〇」です。

「エ 日本では、難民認定を申請した者の入国・在留が認められた例はない。」

「例はない」について、そのまま「試験直前までに変更可能性はあるか」検討します。試験直前までに難民認定を申請した者の入国・在留が認められた場合、問題として成立しなくなってしまいます。もちろん、これは「×」です。

「オ 外国人技能実習制度は、実習生を低賃金労働者として扱うなどの問題が生じている。」

 

まずは、「問題が生じている」を「問題が生じていない」に直します。次に「試験直前までに変更可能性はあるか」を検討します。試験直前までに「問題が生じた場合」、問題として成立しなくなってしまいます。

また、こちらはオマケですが、「実習生を低賃金労働者として扱うなど」の「など」に着目すると、あらゆる問題が全く生じていない制度と言い切ることは極めて難しいため、誤答枝にはできません。もちろん「〇」でした。

 

時事問題は、「落とすための問題」を作ろうと思えば、受験生が対策不可能な難易度の問題をいくらでも作問できてしまいます。

その時に備える意味でも、今回紹介した攻略法を覚えておくことで他の受験生に差をつける機会が増えることでしょう。